6.アパートの契約

 
(2)個人契約と法人契約の相違点
 2003.5.21.
1.はじめに
 
 アパートを決め借りる段階になると契約書が必要となります。オーナーが用意した契約書にサインがかわされるが、ここでは借主が個人、又は法人とする場合のその相違点について説明します。
 
2.現状
 
 当社で紹介し契約したお客さんの90%は個人契約となっています。このデータで見る限り、個人契約が主流でメリットが多いと考えることが出来ます。ここで、検討に入る前に家賃契約に伴うVAT(付加価値税)と源泉税について次の通り説明します。
 
 家賃契約に伴うVATと源泉税 
ケース
貸主
VAT (7%)
借主
源泉税
家賃
家具代
サービス料
法人
なし
あり
あり
法人
差引
法人
なし
あり
あり
個人
なし
個人
なし
なし
なし
個人
なし
個人
なし
なし
なし
法人
差引
        備考:1.家賃及び家具代の源泉税 5%   2.サービス料の源泉税 3%       
 
 貸主が法人、個人、借主が法人、個人の場合を考えると合計4ケースに分ける事ができ、それぞれのケースによって税の取扱いが異なっています。よって、契約書の内容がどのような内訳になっているかチェックする必要があります。
 
3.検討内容
 
(1)
事務処理の問題
   
  個人契約にすると、会社側は家賃相当分を本人に手渡すことによって、会社としての事務処理は終わりますが、一方、法人契約にすると、源泉税の処理作業が発生します。具体的には家賃について5%の源泉税を計算、プールし95%の相当額小切手を発行します。源泉税は翌月の上旬に税務署に貸主に代わって納税します。借主は源泉税納入票と家賃(95%)を支払います。これらの手続きは、日本人の数が多い場合、専門の職員が必要になります。
   
(2)
貸し手側(オーナー)の問題
   
  貸手側が法人の場合、法律に基づいて会計処理を行うため問題はありません。一方貸手側が個人の場合、法人の借手を嫌います。つまり所得の内容が税務署に知られてしまうためです。よって、貸手が個人の場合、法人契約を嫌い、物件を貸さないケースが発生します。又は、源泉税(5%)を上積みして家賃額を提示するケースもあります。
   
(3)
税法上の問題
   
  個人契約、法人契約であっても税法上は全く同じ扱いというのは常識的解釈です。一部に住居を会社名義にして会社が払うことによって本人への所得税を下げ、税は会社負担とする考えがありますが、これは誤った解釈です。国税法第40条によると、雇用主が無償提供した住居の家賃相当額も個人の所得に含む、と記述されています。よって、税法上、個人契約、法人契約にかかわらず個人の所得にかかわってくるからです。
   
4.まとめ
 
 法人契約に固執するメリットが少ない以上、又、借手のアパート入居の選択肢を広げるためにも個人契約をお勧めします。
 
5.備考
 
(1)
デポジットの返却のため、契約書は個人であってもデポジットの領収書は会社宛で書いてもらうことは可能です。
 
(2)
契約書についてオリジナルとドラフトの2種類あり。ドラフトは見本であり、契約日、家賃額の記入のないもの。借手、契約額を記入したものが、オリジナルで、オーナーは契約を交わす前に借手に手渡す事を好みません。