(1)日本人達は普段何を食べているか
@ みそ、しょう油、米、肉、野菜など・・・
あるとき、日本からきた駐在員やその家族たちがどのようなものを食べているかということに興味を持って調べてみたことがあります。
歴史の本などをあたってみると、ほとんどの書物に、日本人は外国に住んでもやはり日本食をなんとか工夫して食べたい、あるいは食べていると書いてあります。現在ではどうでしょうか。やはりこの傾向は変わらず、日本人は日本食を食べるのがほとんどのようでした。そこで、彼等が日ごろ食べている日本食の素材をどういうふうにして手に入れているかコメントしておきます。
まず、"みそ""しょう油"についてです。これは、現地で生産された物、日本から輸入されたものの2種類
がありますが、お金さえ出せば、いつでも自由に手に入れることができます。
次は"塩"です。タイ産の塩は岩塩が主体ですから、味付に使うには、日本の食塩と比べるとはるかにまずい味がします。しかし最近は、日本の食材メーカーがこの岩塩を加工して発売し始めました。この塩は、きちんと加工してあり、日本産の食塩に優るとも劣らない味ですから問題はありません。これもお金さえ払えば、たいして高い値段でなく自由に手に入れることができます。
次は"お米"です。お米は、ジャポニカ米という日本人好みの米がチェンマイで生産されており、現地産のタイ人向けの米と比べれば多少割高ですが簡単に手に入ります。その他副食物の"魚"や"肉"や"野菜"についていうと、魚はタイの近海でとれる物で充分代替が効きますし、肉類、野菜類は日本に比べてもたいへん安く、市場にさえ行けば、海の幸山の幸ともに種類も多く豊富に山積みで売っていますから、いつでも自由に手に入れることができます。
こうした魚屋野菜のうち、タイ 独特のもので日本人に好まれるものもあります。例えばプラーサムリー、プラーカポンという魚、まら
(苦瓜)などの野菜です。ですから、特別に文句を言わないかぎり、日本人向けのマーケットもありそれほど食材で苦労することはありません。
◎主に誰が料理するか・・・
タイでは、メイドさんを月に4500〜5000バーツ程度で雇うことができます。そして驚くべきことに、腕の良いメイドさんは日本人の奥さん顔負けの腕前で日本食を作ることができるといいます。ただ、
こういう人は、そういう噂が立つとひっぱりだこで、なかなか自分のところには回ってこないかもしれませんが。
もちろん、料理をすることが好きな奥さんは自分が台所に立って腕を振るっているようですが、普通は。メイドさんに夕食の支度をさせ、自分は熱帯の午後や夜の余暇をゆっくり楽しんだりしています。
ただ、日本と異なるのは、タイの日本人小・中学校では給食がいっさいないことです。そのため、各家庭で弁当を作って持たせなければなりません。暑い国なのですから、それなりの工夫も必要になるでしょう。
タイに住んでいる日本人の奥さん達は、子供の弁当の中身にも頭をひねらなければならないのです。
(2001.6.30)
(2)豊富な肉、野菜たち
@ 鶏肉、豚肉、牛肉
"肉"という名を示すタイ語は、なぜか主に"牛肉"のことを指しています。その他の肉は違う名で呼ばれています。さて、タイには、肉は、鶏肉、豚肉、牛肉の3種類があります。一般的には、鶏肉がいちばん安く、牛肉がいちばん高くなっています。
"鶏肉"はもっぱら焼鳥(やきとり)にして食べるのが主流で、料理に入れて食べても何故かあまり美味しくありません。
またダシをとるにしても豚肉のダシにはかなわないといわれています。
市場に行くと "豚肉"がそれぞれの部分に切り分けられてたくさん売られています。
ただ、大部分のタイ人(特に中国系のタイ人)は"牛肉"を食べる習慣がありません。
当地で牛というのはほとんどが耕作用の牛であって、酪農の牛はほとんど見られなかったからでしょう。農耕用の牛は、生前田畑の耕作にさんざんこき使われ、死後に食用にされたのでは浮かばれないではないか、ということのようです。
なお、最近ではオーストラリア産の肉用牛が輸入され食用に売られていますが、非常に高くあまり一般的ではありません。日本と違って硬い野菜
一般的にいって、タイの野菜は皮や中身が硬く日本の野菜のような、柔らかさやまろやかさはありません。
これはトマトやキュウリを食べてみるとすぐ分かります。しかしタイ人にはこの硬いものが合っているのでしょうから、われわれ日本人は我慢するしかありません。そしてぜいたくを言わなければ、たいていの野菜は手に入ります。
われわれ日本人は、どこへ行ってもナスの塩漬けが食べたくなったりします。しかし日本のような柔らかいナスはどこを探しても売っていません。こういうことが外国にいると残念なことのひとつになるのです。
ただ味にうるさい人はいるもので、日本のナスに比較的似たものを探して塩漬けにしますが、当地の塩は岩塩なので、日本の塩のようなまろやかさはありません。そこで、塩も日本の天日で作ったものをわざわざ取り寄せて使うことになります。(2001.6.30)
@ 水と飲み物
飲料水は、前にも説明したように、水道水を煮沸して使うしかありません。生水を飲むのは禁物です。バンコクの水道は、パトタムニー県のメナム河の水を汲み上げて上水道として使用していますが、殺菌や消毒がいまひとつなので、そのままでは使えないのです。ですから、少しでも美味しい水を飲みたい人のためにはポラリスなどのミネラル・ウォーターが売られています。
その他の飲み物、たとえばソフト・ドリンクなどは、日本と同じで自由に手に入れることができます。 ビンのコーラ類が7バーツ、缶のコーラが13バーツ位です。また、日本の明治乳業と合弁会社のCP
明治の牛乳も売られています。これは830ccのものが30バーツ、2000ccのジャンボが60バーツで売られています。
A 酒、タイでよく飲まれるメコン・ブランド
酒類、特に洋酒は日本より種類が豊富にあります。ただし、ウィスキーでも、市内で売られているものと空港で売られているものとでは中味が違うようです。それはどうしてかというと、空港で売られているものは本場からの直送ですが、スーパーなどで売られているものは、タイの国内で瓶詰めにしたものだからだということのようです。
タイ人が一般的に飲むお酒は、まず国民酒の観がある「メコン」ブランドのウィスキー、さらにこれより一級上の「ブラックキャット」なるウィスキー、さらにこれより一級上の「リージェンシー」なるブランデーの3つでしょう。
「メコン」ウィスキーは、小説などにもよく登場する有名な酒です。このほか田舎やバンコク郊外では、 ビンに詰めた白濁した酒を見かけますが、これはドブロクです。ドブロクの中にも一般的に「カチェー」と呼ばれるものは、さらりとした純米酒でなかなか上品な風味があります。(2001.6.30)
(4)タイの食べ物、名物料理は
@ "ソムタム"という野菜サラダ
タイには、タイ独特の食べ物と料理がたくさんあります。こういう食べ物などについてはいろいろな本にも紹介されていますし、東京などにもタイ料理の店がたくさんあってご存知の方も多いと思いますが、ここで改めて幾つかご紹介しておきましょう。
まず、タイの人たちが誰でも大好きでいつでも食べているもの、それはあの名物の"トムヤムクング"
(これは後で紹介します)ではなく"ソムタム"という料理です。まあ料理といっても簡単にできるもので、それだけにいつでも食べることになるのでしょうが、無理に日本語に翻訳すると、"タイ風サラダ"ということ
になると思います。
なにしろ、タイの人達を相手に話をするとき、「私は"ソムタム"がいちばん好きだ、大好きだ」とやると、間違いなくバカ受けします。これはちょうど、日本に来た外国人が日本人に向かって「私はみそ汁が大好きだ!」と言った時と同じだといえばいいでしょうか、それと同じヒビキを持った言葉です。それほど、このソムタムはタイ人が年中食べ、欠かすことのできない食べ物なのです。
このソムタムは、カニの身をほぐした物を入れた「ソムタムプー」がスタンダードな形で、これにガイヤーング(焼き鳥)、さらにカウニョウ(モチ米を蒸したもの)を合わせて食べるのがお勧めです。ただ、
このソムタムといろいろ組み合わせたセットは、なぜか昼食として食べるのがほとんどで、朝食や夕食に食べることはあまりないようです。
A 日本人好みのタイの名物料理
ところで、このソムタムは作りが簡単なため、誰でも食べたがる名物料理というわけではありません。そこで、次は日本人が食べる名物料理をご紹介しましょう。
まずは"タイスキ"です。これは日本のシャブシャブと同じようなものだと思っていいでしょう。 大きな鍋に、エビ、魚、肉や野菜を入れて沸騰させ、皆でまわりからつつき合って食べることになります。
そしてこの料理の味の決め手は"タレ"にあります。これはその店その店の秘伝の味があって、大変美味しいので店の人に聞いてみても"極秘です"と言って教えてくれません。
次は"海鮮料理"です。このシーフード・レストランは、「海鮮料理」とタイ語ではなくどこにあっても漢字の看板がかかっていますから判りやすいでしょう。こうした店のナンバーワンの料理は"トムヤムクン"
です。この料理は、タイ料理を語るときに最初に出てくるもののひとつで非常に有名なものです。
料理は、食材として、ブラックタイガー・エビあるいは淡水産手長エビが多く使われます。他にヘット・ファーンというキノコが入ります。味は「辛くて熱くてすっぱい」複雑な美味しさです。大きくわけてココナツ・ミルクを加えたものと、加えないものの2種類があります。
また、こうした"海鮮料理"のレストランでは、生きたままのエビやカニをふんだんに食べさせてくれますから、日本ではなかなかできないぜいたくな味を楽しむことができます。なお、タイ人とこうした場所で食事をするのは、普段とは違った高級なもてなしとされています。
B "中国料理""ベトナム料理"
ところで、タイにも華僑はたくさんいます。そうした中国系のタイ人が最高のもてなしとして招いてくれるのが中国料理です。ただ中国系の人が好むこうしたチャイニーズ・レストランの料理は油をたくさん使った料理が多いため、日本人の間の人気は二分されるようです。
最後に番外編としてベトナム料理があります。これも不思議にタイ人に好まれているようで、日本料理と同じく仕込みをして作り、量をたくさん食べるのではなく、少量を、味わって食べる料理ですから大食の人にはあまりお勧めできません。食べ歩くのを趣味としている人と連れ立って、ベトナム料理と日本料理を食べ比べてみる、などというのも、食通としては楽しいことかも知れません。
(5)外食を楽しむ
@ 外で食べるときは
タイは食べ物の値段が安いので、外で食事をするのはさかんです。これは東南アジア一帯に共通することなのだと思いますが、調理済みの料理を安く手に入れることが出来るのと、外で食べても大してお金がかからないせいもあるのだと思います。
日本から来た人達もしばしば外で食事をするようです。外で食べる場所も、高級なレストランから近所の食堂や屋台のようなところまで、予算に応じていろいろ選べます。要は、静かに高級な料理を楽しむか、現地の人達にまじって、ガヤガヤと食事をするか、ということでしょう。
ほとんどの人は、店選びや食べることより、家族と一緒に楽しい時間を過ごすことにポイントをおいているのでしょう。それほどこだわらずにいろんな店を訪れているようです。ただ外で食べてアルコールが入ると、酔いが回っていらぬトラブルを起こすこともあるでしょうし、外地
の夜ということで危険な目に会うこともあります。
そこはほどほどにした方がいいでしょう。どうしてもある程度飲みたいときは、やはり自宅でやる方が安全です。
A 日本の料理を食べたいときは
日本人は、外国にいても、どうしても日本料理をということになってしまいます。時々日本のあの淡白な料理を食べないと体調までくずしてしまうという人が多いようです。そこで、どこかで食事をということになると、どうしてもそちらに足が向いてしまうことになります。
バンコクにいて、どうしても日本の味をというときは、100軒を数える日本料理店のうちどこかに足を向けることになりますが、それぞれグレード、種類が異なり、好みによりチョイスできます。
(6)タイの食材は
@ 食べ物を準備するには
タイは食べ物の非常に安い国です。そこで、市場やスーパーマーケットで材料を買ってきて時間をかけてして楽しく食べましょうということになるのでしょうが、そんな手のかかるめんどうなことをしないでも、すでに調理されたものをたくさん売っていますから、これを電子レンジでチンと暖めて食べる方が簡単ですし、その割には美味しくもあります。どちらかというと、この方を私はお勧めします。
前ページでもお話したように、タイでは安い賃金でメイドさんを雇うことができ、彼女達はコックも兼ねていますから、できれば奥さん達もわずらわしい家事から開放された方がいいのではないでしょうか。
タイの人達は、年中、からい味付のものばかりたべているわけではなく、日本人の口に合う食べ物も あります。家庭で作れないような物は、できた物を買ってきて食べるというのも合理的ではないでしょうか。
ましてメイドさんを雇うことができるのなら、それでできた余暇をタイの文化や社会を知るために使ったり
趣味を生かしたりして、おおらかにのんびり過ごすのも、熱帯のサバーイ(快適)な生活の仕方ではないでしょうか。
A 日本食を用意するには
一方、同じ食べ物を用意するといっても、日本食ということになると、話は別になってきます。前項でもお話したように食材は豊富にあり、いつでもで手に入れることができますが、日本食独特のものとなると、ある物は簡単に手に入りますが、なかなか手に入らず困ってしまうようなものもあります。使う調味料ひとつ考えてみても、安くすぐ手に入れることができるものもあれば、大変高価なものもあっていろいろです。
ただ、日本から輸入されたもの(日本と同じ製品)は、日本の定価の約2〜2.5倍の値段になります。 いくら便利で日本と同じ生活ができるといっても、それなりの不便さは覚悟しなければなりません。
(7)食材を購入する場所と方法は
@ 日本商品専門のスーパーマーケット
スクムビットを中心に日本人の約90%が住んでいるため、ここにはフジスーパーがあり、この店には日本人が必要とする品物のほとんどが揃っています。
他にもスーパーマーケットはあり一応日本の品物を並べていますが、このフジスーパーにはかなわないようです。この界隈に住んでいる日本人達は、1週間に1度この大スーパーに買い物に来て、それ以外は近所の店で間に合わせているのが現状ではないでしょうか。
A タイのスーパーマーケットと市場(タラート)
現地の人、すなわちタイ人が多く利用するタイのスーパーマーケットでもかなりの品物を調達することができます。日本とタイとでは人種も生活も違うとはいっても、こと食べることについては共通するところもあるわけでしょう。
タイ人が行く市場(タラート)は、品物は新鮮で豊富だし、安い値段で売っていますが、多少タイの生活に慣れてから行くことをお勧めします。なぜかというと、スーパーマーケットでは、品物にキチンと正札がついているので、その値段で買えばいいわけですが、市場で購入する場合は交渉して値段を決めなければなりません。交渉の仕方によっては現地の人が目を向くような値段で買わされるようなこともあるわけです。
日本人の場合は外国人ですから、多少高い値段で買うことになっても仕方がないのでしょうが、実際に買いに行ったときは、タイ語の練習だと思って交渉してみたらどうでしょうか(ただし、ヒヤカシだけの買う気のない交渉はやめた方が良いでしょう。これはさすがにおとなしいタイの人でも怒ります)。
ただ、何度も通って買い物をしているうちに店の人と顔なじみになれば、タイ人と同じ価格で買うことができるようになります。
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