21.賢い法律事務所の選び方

 
 (1)法律事務所
 

  タイには大小さまざまな法律事務所がある。日本と同じように、当地でも法律事務所というところはなかなか敷居が高く、気軽には訪ねにくいものだ。
以下に小林株式会社の経験を通じた法律事務所の選び方を述べたい。

  まず何よりも必要なのは、自身の立場を見極めることだ。自分が何者なのかによって訪ね先も変わってくる。以下に3種類に分類したい。
 
 @ 日本に本社がある法人   A 日本に本社のないタイ法人   B 個人

 @の法人の場合、大体本社の方から利用する法律事務所を指定してくることが多く、現地で働く人間が選択できることは少ない。

 実際には、特に大手欧米法律事務所の場合、各国事務所間でネットワークが構築されているわけではなく、各国の商習慣を理解しているかは別問題なのだが、選択できないのであれば仕方がないだろう。

 問題はAとBの場合だ。率直に言って、大手の法律事務所は日本に本社のある法人の事件しか取り扱わないところが多い。
新たにビジネスを始める小さな会社なぞ、門前払いもざらだ。よって、小さな法律事務所を賢く利用する方法を考えなくてはならない。

 当社として提案したいのは、年間顧問契約を結んで常時相談できる、ホームドクターのような法律事務所を作っておくことだ。
困難だがこれが理想だといい添えておきたい。

 
(2)料金の相場
 

 法律事務所は、年契約に基づき料金を決める場合と、個々の案件に対し個別に料金を設定する場合の2種類の料金システムがある。

 @の法人の場合などは、大抵年契約で細かな案件まで相談出来るようにしている。
 Bの個々の案件の場合だが、相談に行けば、とりあえずどのくらいの月日がかかり、いくらくらいの予算がかかるのか見積りを教えてくれる。

 タイでは法律事務所によって料金がバラバラで、サービス内容もかなり異なっている。何軒か回って相場を知るのも1つの手だろう。
 
  ただ、あらかじめ相場を知らないと訪問しずらいという人のために、実際にあった訴訟でどの程度の料金がかかったか紹介し参考にしてもらいたい。

 
当該事件は民事訴訟。原告はAの立場で、取り扱ったのは地場系法律事務所だ。損害賠償請求額は300万バーツ。法律事務所はまず契約時点で10万バーツ、第1回口頭弁論時点で10万バーツ、結審時に10万バーツを請求、合計30万バーツとなった。これはどうやら相場だったらしく、一般的に損害賠償請求額の10%が目安のようだ。
 
 ただし、これは地場系法律事務所の相場であり、外資系の事務所はいくらか高くなると覚悟が必要だ。

 
(3)賢い法律事務所の選び方
 
 これでもまだ法律事務所を訪ねにくい人のために、当社の推薦する Kimberley Law Officeでコンサルタントをしている小峰博明氏に、賢い法律事務所の選び方を伺った。
 
当該法律事務所を利用したことのある体験者の紹介が一番。  
   
タイで外国人は弁護士業を行うことはできないため、日本人で弁護士を名乗っている場合は「広告に偽りあり」と思ってよいだろう。
 
   
タイの法曹界の不文律として、法律事務所は広告、宣伝をしないという決まりごとがある。広告を派手に掲げている法律事務所は法曹界の紳士協定に反しているということだ。この不文律が良いものかどうか判断は分かれると思うが、一応の目安にはなるだろう。
 
   
実際に裁判を担当するタイ人弁護士の出入りが激しい事務所は避けること。ネームバリューのある大手事務所でも、タイ人弁護士への報酬の低さから弁護士が長く居着かない事務所がある。この場合、事件が長くなった時に大きな問題となる。
つまり、フォローする人物が途中交代し、途中から「最初の頃のことはよく知らない」などと言われるケースだ。一貫して同じ担当者に事件を扱ってもらえないようでは危険だ。
 
 
   
日本人窓口、通訳などがしっかりしている事務所を選ぶ。優秀な法廷通訳は、言葉が上手なだけでなく、場慣れし雰囲気をうまくつかむ。料金の安さで選んで「安物買いの銭失い」にならないようにすること。サービスの質を十分に確認すること。
 
   
自身の抱える問題を得意とする事務所を選ぶ。労務に強い、税務に強い、など事務所により得手不得手はある。
自身のニーズにあった事務所を選ぶこと。